太陽光パネルの設置を、2回検討した。新築のとき。そして後付けで検討したとき。結局どちらもやめた。代わりに選んだのが、ポータブル電源だった。「なぜ太陽光にしなかったのか」を正直に書く。実際にもらった見積書の数字も公開する。同じように迷っている人の参考になれば嬉しい。
新築のときは、年齢で断念した
家を買ったのは40代前半だった。新築時、ハウスメーカーから太陽光パネルの提案があった。検討したが、やめた。理由はシンプルで、年齢だ。太陽光パネルの元を取るには20年以上かかると言われていた。自分が60代後半になるまで払い続ける計算だ。その頃に体が動いているか、仕事が続いているか、何も保証はない。「長期間の投資」と考えたとき、自分の年齢では踏み切れなかった。結果、新築時はステイした。
後付けを検討したのは、休職がきっかけだった
その後、コロナに罹患してICUに入り、1年半休職することになった。電気代は毎月かかり続ける。収入が減った状態で固定費を見直す中で、「やっぱり太陽光をつければよかったか」という気持ちが一瞬よぎった。改めて後付けを検討することにした。2023年3月のことだ。
実際にもらった見積もりは245万円だった
業者に依頼して、実際に見積書をもらった。システム内容は長州産業・4.559kW+蓄電池スマートPvmulti 9.8kWh。
- 全負荷型蓄電システム:2,450,000円(税込)
- 特定負荷型蓄電システム:2,260,000円(税込)
全負荷型は停電時に家全体に電力を供給できるタイプ。特定負荷型はあらかじめ決めた回路だけに電力を回すタイプで少し安い。どちらも200万円を超えた。内訳には太陽電池モジュール・リチウムイオン蓄電池・ハイブリッドパワーコンディショナー・トランスユニット・PVユニット・分電盤・ゲートウェイといった機器代に加え、設置工事・電気配線工事・パワコン設置・架台組立・蓄電システム設置・電力会社申請手続き費が含まれていた。機器代だけでなく、工事費だけで数十万円規模になる。
元が取れるのか、自分で計算してみた
「245万円を投じて、何年で回収できるか」を試算した。2023年度の住宅用太陽光(10kW未満)の売電価格(FIT)は16円/kWhだった。4.559kWのシステムで、関東エリアの年間発電量は概算で約4,500〜4,600kWhと言われている。そのうち自家消費分を除いた売電量を約50%と仮定すると、年間の収支はこうなる。
- 売電収入:約2,300kWh × 16円 = 約3.7万円/年
- 自家消費による節電効果:約2,300kWh × 27円(電力単価目安)= 約6.2万円/年
- 合計年間メリット:約10万円/年
245万円 ÷ 10万円 = 約24〜25年。太陽光パネルの設計寿命は一般的に20〜25年とされている。つまり、寿命が来るころにようやく元が取れる計算だ。ほぼトントン、もしくは届かない可能性もある。この試算はあくまで概算だが、「早期に元が取れる」という期待は持てないと判断した。
売電価格は、ピーク時の3分の1以下になっていた
太陽光の売電価格は、2012年のFIT制度開始当初は42円/kWhだった。それが2023年には16円まで下がっていた。10年で60%以上の下落だ。「太陽光で元が取れた」という話は、この42円時代に始めた人の話が多い。今から始めても、同じ試算は成立しない。さらに、FITには10年間の固定買取期間がある。期間が終わると、売電価格は市場連動になる。「10年後にさらに下がる可能性がある」という不確実性も、判断に影響した。
補助金を使っても、大幅には変わらなかった
太陽光+蓄電池の設置には、国や自治体の補助金が使える場合がある。2023年当時、蓄電池補助金では1kWhあたり数万円の補助が出るケースもあった。仮に9.8kWhの蓄電池に補助が出たとして30〜36万円程度。245万円から引いても200万円超の投資が残る。回収期間は20〜21年前後だ。補助金があることは知っていたが、申請手続きの複雑さや条件・期限も含めて考えると、「それでも200万円超の投資をするか」という判断は変わらなかった。自治体によって補助金の有無や金額が異なるため、事前に居住地の制度を確認することは必須だが、それだけで最終判断が変わるほどの差は出なかった。
見えにくいコストが積み重なる
- パワーコンディショナーの交換:設置から10〜15年で寿命。交換費用は20〜30万円が目安。
- 蓄電池の交換:蓄電池の寿命は10〜15年程度。交換費用は50〜100万円とされる。
- 定期点検・清掃:年間数万円かかる場合がある。
- 火災保険の見直し:パネルを設置すると保険内容が変わることがあり、追加費用が発生するケースもある。
これらを加算すると、15〜20年の間に追加で100万円以上かかる可能性がある。245万円の初期費用に途中の維持費用を加えると、実質的な回収はさらに先になる。あるいは、回収できないまま終わることも十分あり得る。
ポータブル電源を選んだ理由
太陽光パネルをやめた後、「電力の備え」として選んだのがポータブル電源だった。購入したのはEENOUR P5000PRO(5120Wh・最大出力4000W)。価格は数十万円の範囲で収まった。太陽光との比較で決め手になったのは以下の点だ。
- 初期費用が桁違いに安い:太陽光+蓄電池の245万円に対し、ポータブル電源は数十万円。
- メンテナンスがほぼ不要:屋根に固定するわけではなく、工事も業者も不要。
- 持ち運べる:家に据え付けではないので、引っ越しがあっても持っていける。
- すぐ使える:設置工事不要で、届いたその日から使える。
「発電して売電する」という仕組みからは外れるが、「電力を蓄えて使う」という目的だけで考えると、ポータブル電源で十分だという結論になった。
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実際に2年使って、わかったこと
ポータブル電源を購入してから2年近くが経つ。停電時には実際に使えた。テレビ・スマホ3台・照明・扇風機を同時に動かしても容量に余裕があった。子どもが4人いる家庭でも、「電力がなくなる」という不安なく過ごせた。毎月の電気代は変わらないし、発電して節電できるわけでもない。あくまで「備え」としての道具だ。それで十分だと思っている。売電収入を当てにした20年計画を立てるより、手元に確実な備えを持つ方が、今の自分の状況には合っていた。
太陽光が向いている人、ポータブル電源が向いている人
太陽光パネルが向いている人
- 30〜40代前半で、20年以上同じ家に住む予定がある
- 屋根の向きや面積が発電に適している(南向き・広め)
- 初期費用を長期投資として割り切れる
- 電力の自給自足や売電収入に関心がある
ポータブル電源が向いている人
- 年齢や収入の状況から、数百万円の初期投資が難しい
- 長期の回収計画より、今すぐ使える備えを優先したい
- 将来的に引っ越す可能性がある
- メンテナンスの手間や追加費用を避けたい
自分は後者だった。それだけのことだ。どちらが優劣ということではない。
「自分は太陽光が向いているかもしれない」と感じた方は、まずシミュレーションと見積もりを取ってみることをすすめる。実際の数字を見てから判断しても遅くはない。複数社から無料で一括見積もりが取れるサービスを使うと、業者ごとの差も比べやすい。
まとめ
太陽光パネルの設置を2回検討して、2回やめた。見積もりは245万円。2023年時点の売電価格(16円/kWh)で試算すると、回収に24〜25年かかる計算だった。寿命とほぼ同じ期間だ。そこにパワコン・蓄電池の交換費用が乗ると、実質的に元は取れない可能性が高い。売電価格はピーク時(42円)の3分の1以下になっており、今から始める場合と過去の成功事例では条件がまるで違う。自分が選んだのはポータブル電源。初期費用は数十万円で済み、工事不要、メンテナンスもほぼ不要だ。売電収入はゼロだが、「備え」としての役割は十分果たしている。どちらが正解かは、年齢・家の状況・予算・何を優先するかによって変わる。「太陽光は損か得か」だけで判断するのではなく、自分のライフステージや家の使い方と照らし合わせて考えてほしい。この記事が判断の一助になれば嬉しい。
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