家を買ったのは44歳のときだった。
3人の子どもを抱え、賃貸では限界になっていた。「今買わなければずっと買えない」という焦りと、「本当にこれで正解なのか」という不安の両方を抱えながら決断した。あれから数年、50代に差し掛かった今、改めて振り返ってみる。
結論から言えば、後悔はしていない。ただ、「買えばすべて解決」ではなかった。住宅購入後も、ローン・修繕・固定資産税・保険料と、お金との戦いは続いている。それも含めて「買ってよかった」と言える理由を、できるだけ正直に書いていく。
なぜ40代で家を買ったのか
単純に手狭になったからだ。
子どもが3人のころ、親の寝室のベッドの足元に子ども用の布団を敷いて寝かせていた。ベッドと布団で部屋がいっぱいになり、夜中に誰かがトイレに起きるたびに誰かが目を覚ます。手狭さへの限界が、購入の決断を後押しした。
賃貸のまま広い物件に引っ越すという選択肢もあった。ただ、いずれ買うつもりなら早いほうが住宅ローンの返済期間を長く取れる。年齢が上がるほど、定年までの返済期間が短くなり、月々の返済額が増える。44歳という年齢でも、完済は70代になる計算だった。それでも「今決断しなければ、ずっと賃貸のまま」という判断をした。入居後にコロナに罹患してICU入院を経験し、退院から2か月後に4人目が生まれた。家を買っていなければ、あの時期を乗り越えることはもっと難しかったと思っている。
購入にあたって最も悩んだのは価格だった。賃貸より当然高い。固定資産税もかかる。管理費・修繕積立金が不要な戸建てを選んだが、その分、設備の修繕はすべて自己負担になる。それらをすべて理解した上で、「それでも買う」と決めた。
買ってよかったと思う点
10年以上住んでみて、購入時には想像していなかった「よかった」と感じる場面がいくつかあった。率直にまとめていく。
①コロナ罹患のときに家族と隔離できた
これは購入時には想像していなかった恩恵だった。
コロナに罹患したとき、家族への感染を防ぐために1部屋で隔離生活を送ることができた。食事は部屋の前に置いてもらい、トイレも時間帯をずらして使う。そういう対応ができたのは、部屋数に余裕があったからだ。賃貸の狭い間取りでは、隔離という選択肢そのものがなかったと思う。退院から2か月後には4人目が生まれた。新生児がいる状態で隔離できる部屋があったことは、家を買っておいてよかったと心から思えた瞬間のひとつだ。
私はICU入院を経験しており、コロナの重症化がどれほど怖いかを体でわかっている。家族にうつさずに済んだことへの安堵は、今も忘れられない。
②親と子の部屋が明確に分かれた
当たり前のことのようだが、これが実現しただけで生活の質が大きく変わった。
子どもたちは子ども部屋で3段ベッドを使っている。購入時は3人だったが、入居後に4人目が生まれてからも同じ部屋で対応できた。少なくとも親の寝室と子ども部屋が分かれたことで、睡眠の質が大きく改善した。足元に布団を敷いていた時代と比べると、全然違う。
子どもたちにとっても「自分たちの空間」ができたことで、部屋の使い方への責任感が生まれた気がする。散らかしっぱなしにすれば自分たちが困る。そういう意識が自然と育った。
③仕事部屋ができた
在宅での副業や作業に使える専用スペースができたのは、想像以上に大きかった。
家族の気配を感じながらも集中できる場所がある。賃貸時代は「仕事するならリビングのテーブル」しかなかった。子どもがうるさくても移動できず、集中できないまま時間だけが過ぎた。仕事部屋ができてからは、「ここに入ったら仕事モード」というスイッチが自分の中に生まれた。
休職中は体を休める場所として使い、回復後は副業を進める場所として活用している。同じ部屋でも、使い方が時期によって変わるのも戸建ての柔軟さだと思う。
④玄関・トイレ・風呂が広くなった
4人の子どもがいると、玄関は靴だらけになる。今も大量に出ているが、それでも賃貸のときより格段に余裕ができた。子どもたちが部活から帰ってきたとき、玄関が詰まって入れない、ということがなくなった。
トイレが1階と2階で2つになったのは、朝の混雑が解消されて本当に助かっている。6人家族でトイレが1つだと、朝の時間帯は戦争になる。2つになってから、「トイレ渋滞」でイライラすることがほぼなくなった。
風呂が大きくなったことも地味にありがたい。子どもが小さいころは一緒に入れるが、大きくなると順番待ちになる。浴槽が広くなったことで、湯船にゆっくり浸かれるようになった。これは体のコリや疲れの回復に意外と効いている。
⑤近所が子育て世帯の多いエリアだった
これは購入前にはあまり意識していなかったが、住んでみると大きなメリットだとわかった。
同じような年齢の子どもを持つ家庭が近くに多く、子どもたちが自然に外で遊べる環境がある。学校の情報交換、地域のイベント、ちょっとした困りごとを相談できる近所づきあい。マンション賃貸時代には希薄だった「地域のつながり」が生まれた。
子育て中の親にとって、近所に同じ境遇の人がいることの安心感は想像以上だ。「あそこの家もこういうことで困ってる」という情報が入ってくるだけで、孤立感が減る。
後悔していること
一つだけある。太陽の向きだ。
午後になるとすぐに日が陰ってしまい、洗濯物が乾きにくい。特に冬場は午後2時ごろには影になってしまう。風が通るので乾かないわけではないが、「もう少し日当たりがよければ」と思う日は今でもある。
内覧のときは午前中に行ったため、日当たりが良く見えた。午後の内覧もしておけばよかったと思っている。日当たりは住んでみるまでわからない部分が大きい。特に隣家との距離、建物の向き、周囲の建物の高さによって大きく変わる。購入を検討している方は、できれば時間帯を変えて2回内覧することをおすすめしたい。
購入前に確認しておくべきだったこと
振り返ると、購入前にもっと確認しておけばよかったと思うポイントがいくつかある。
日当たりの次に挙げるとすれば、周辺の開発計画だ。購入後に近隣で新しい建物の建設が進み、日照や騒音の環境が変わることがある。市区町村の都市計画図や建築確認申請の情報を事前に確認しておくと、購入後の「こんなはずではなかった」を防げる。
もう一つは、修繕費の積み立てだ。戸建ての場合、マンションと違って修繕積立金を自分で管理する必要がある。屋根・外壁・給湯器・エアコンなど、10〜15年サイクルで大きな出費が来る。購入後すぐから月2〜3万円を修繕費として別口座に積み立てておくと、いざというときに慌てずに済む。これは購入時に不動産会社から教えてもらえなかった情報だ。
住宅ローンと、今の向き合い方
金利が上昇局面に入っており、変動金利のローンを抱えている方は不安を感じているかもしれない。私も他人事ではない。
借り換えも一時期検討した。他行に借り換えることで金利差のメリットが出る可能性はあった。ただ、その当時は休職中で体力も思考力も余裕がなかった。諸費用の計算、複数行への問い合わせ、書類収集、審査対応。それだけのエネルギーを出せる状態ではなかったため、見送った。
今は並行して進めてきた投資のリターンが、ローン金利の上昇分を上回っている状態になっている。定期貯金中心だった資産をNISAや投資信託に分散させたことで、資産側で金利上昇をカバーできている。トータルで見ればプラスになっていることが、ローンへの不安を和らげてくれている。
40代・50代で持ち家をお持ちの方へ
家を買って10年以上経つと、住宅ローンの借り換え余地が生まれていることがある。モゲチェックは複数の金融機関を無料で一括比較できる。今の条件と比べて、見直しの余地があるかどうかだけでも確認してみてほしい。
火災保険も購入時のままにしている方が多い。見直しで保険料を下げられるケースがあるので、インズウェブの無料一括見積もりで確認しておくとよい。自分が新規加入時にどう比較して選んだかはこちらの記事に書いている。今なら見積もりだけで全員にセブンプレミアムカフェラテがもらえるのもうれしい。
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家計の管理は、スプレッドシートとスマホアプリを使って毎月の支出と資産残高を妻と共有している。「見える化」することで漠然とした不安が減り、「今月はここを抑えよう」という具体的な行動につながっている。数字を知ることが、最初の一歩だった。
これから家を買う同世代へ
日当たりと生活動線は、内覧のときに必ず確認してほしい。
特に日当たりは時間帯によって大きく変わる。午前に良くても午後に陰る、という物件は少なくない。内覧を2回以上、時間帯を変えて行うことをおすすめする。
動線については、「元気なときの使い勝手」だけでなく「体が弱ったとき・老後の動線」も想像してみてほしい。私は休職後に体が不自由になった経験から、トイレの数・階段の手すり・浴室の広さがどれだけ重要かを実感した。今は元気でも、この先どうなるかはわからない。
また「今の手狭さ」だけで判断するのではなく、「10年後の家族構成」も想像してから決めることをおすすめする。子どもが独立すれば部屋が余り、夫婦だけになれば広すぎると感じる日が来るかもしれない。住宅は一度買ったら終わりではなく、ローン・保険・リフォームと長く向き合い続けるものだ。
まとめ
40代で家を買ってよかったと思う点を整理する。
- コロナ罹患時に家族と隔離できた
- 親と子の部屋が明確に分かれ、睡眠の質が上がった
- 仕事部屋ができ、副業・在宅作業の効率が上がった
- トイレ・風呂・玄関が広くなり、6人家族の朝が楽になった
- 子育て世帯の多いエリアで、地域のつながりができた
後悔しているのは日当たりの確認不足だけだ。それ以外は、50代になった今も「あの決断は正しかった」と思っている。
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住宅購入は人生で最大規模の買い物のひとつだ。焦らず、できれば複数回内覧し、ローンと家計全体のバランスを数字で確認した上で決断してほしい。そして買った後も、家計の見える化を続けることが長期的な安心につながる。

