友達に保険を売った結果、友達が減った話|元保険営業マンの後悔と気づき

友達に保険を売った結果、友達が減った話|元保険営業マンの後悔と気づき お金・資産形成

保険の営業マンだった頃、友達に保険を売った。

数十人に声をかけた。これでも少ない方だと思う。結果、3/4は残ってくれた。でも、親友だと思っていた数人が離れていった。

あれから何年も経った今でも、あの時のことは悔いが残っている。

保険営業を始めた頃|声をかける相手がいない

外資系保険会社に入社して、最初にぶつかった壁は「見込み客がいない」ことだった。

保険営業は人脈が命だ。だが、20代の自分には大した人脈がなかった。前職の訪問販売で培った営業力はあったが、売る相手がいなければ意味がない。

会社からは「まず身近な人に声をかけろ」と言われた。つまり、友達だ。

保険業界では「マーケット」という言葉を使う。見込み客のリストのことだ。新人にとって最初のマーケットは、家族、親戚、友人。自分の人間関係そのものが営業リストになる。

違和感はあった。友達を「マーケット」と呼ぶこと自体に抵抗があった。でも、それが業界の常識だった。売れる営業マンは、最初に身近な人に売っている。成功事例として語られるのは、いつも「友人や知人にまず50件提案した」という話だった。

友達に保険を売ることへの葛藤

葛藤はあった。

友達に「保険の話を聞いてほしい」と言う。それだけで、関係が変わるかもしれない。「あいつは金のために友達を利用する」と思われるかもしれない。

だから、最初に声をかけたのはずっと先だった。ある程度自信がついてから。商品知識を身につけ、自分が心から良いと思える商品を提案できる状態になってから、ようやく声をかけた。

扱っていたのは資産系の商品だった。掛け捨てではなく、資産として増えていく保険。だから、提案して喜ばれることの方が多かった。それが救いだった。

提案する時は必ず、相手の家族構成、収入、将来の計画を丁寧にヒアリングした。友達だからこそ、適当な提案はしたくなかった。むしろ友達だからこそ、本気で相手のことを考えた。結果的に、それが喜ばれる提案につながったのだと思う。

一方で、話を聞いてくれた上で「今はいらない」と断ってくれた友人もいる。その人たちとは今も普通に付き合っている。断られたことで関係が壊れることはなかった。壊れたのは、話を聞く前に距離を置かれたケースだった。

この違いは大きかった。「保険の話をされるのが嫌」という人と、「保険の内容を聞いた上で判断したい」という人。前者とは最初からどうしようもなかった。後者とは、断られても関係が続いた。相手の姿勢は、こちらがコントロールできるものではない。だから、悔やんでも仕方ない部分もある。

ただ、「話を聞いてもらう前に離れられた」ケースについては、自分のアプローチに問題があったのかもしれない。もう少し丁寧に、もう少し慎重に、最初の切り出し方を工夫していれば、結果は違ったかもしれない。

数十人に声をかけて|親友が離れた日

声をかけたのは数十人。保険営業の世界では少ない方だと思う。中には「まず200人リストアップしろ」と指導する会社もある。親族、友人、同級生、元同僚、近所の人。思いつく限りの人をリストにして、片っ端から連絡する。それが業界のやり方だった。

自分はそこまでやれなかった。リストは作ったが、連絡できたのは数十人。一人ひとりに「この人に提案して大丈夫だろうか」と考えてしまい、動きが遅くなった。トップセールスにはなれない営業マンだった。

3/4は残ってくれた。思った以上に多かった。「いい商品だから入ったよ」と言ってくれる人もいた。中には「もっと早く声かけてくれればよかったのに」と言ってくれた人もいる。その一言で、どれだけ救われたか。

保険は目に見えない商品だ。加入した瞬間には何も起こらない。でも10年後、20年後に「あの時入っておいてよかった」と思ってもらえる。その未来の感謝のために、今の友情をリスクにさらす。それが保険営業の本質的なジレンマだった。感謝された経験もある。

だが、親友だと思っていた数人が離れた。

ある日、親友だった一人にLINEを送った。既読はつくが返信がない。もう一度送っても同じ。電話をかけても出ない。共通の友人に聞いても「最近会ってないな」とだけ。

直接「保険のせいで距離を置いている」と言われたわけではない。でも、タイミングを考えれば明らかだった。保険の話をした後から、連絡が途絶えた。

連絡が返ってこなくなった。飲みの誘いにも応じてくれなくなった。理由は聞けなかった。聞く勇気がなかった。たぶん、保険の話をした時点で「そういう関係だったのか」と思われたのだと思う。

今でも悔いが残る。もっと別のやり方があったのではないか。もっとタイミングを考えるべきだったのではないか。答えは出ない。

残ってくれた友人の資産を増やせた

一方で、残ってくれた友人たちの資産は確実に増えた。

資産系の保険は時間が味方になる。長く持つほど、解約返戻金が増えていく。あの時提案した商品が、10年、15年経った今、友人たちの資産になっている。

「あの時入っておいてよかった」と言ってもらえることがある。ある友人は、10年前に入った保険の解約返戻金が数百万円になっていて、「あの時勧めてくれてありがとう」と言ってくれた。別の友人は、子どもの教育費に充てるために一部を解約し、「助かった」と連絡をくれた。それが、保険営業をやっていた自分にとって一番の報酬だった。

友達が減った。でも、残ってくれた友達の人生に貢献できた。この事実は、今の自分を支えている。

保険業界を離れて|年賀状でつながる関係

保険業界を離れた後も、残ってくれた友人たちとは年賀状で連絡を取っている。

営業の関係ではなく、純粋な友人として。保険を売ったことがきっかけで深まった関係もある。お互いの家族の近況を報告し合い、たまに会って飲む。それだけの関係だが、大事な関係だ。

営業を辞めた後、離れていった友人に手紙を書こうかと思ったことがある。「あの時はごめん」と。でも書けなかった。書いたところで、関係が戻る保証はない。むしろ、また傷つけるかもしれない。

離れていった友人のことは今でも考える。でも、追いかけることはしない。自分ができることは、残ってくれた友人を大切にすること。それだけだと思っている。

不思議なもので、保険をきっかけに深まった友情もある。お金の話を本音でできる関係は貴重だ。保険に入ってくれた友人とは、その後も資産運用の話をしたり、家計の相談に乗ったりしている。「保険を売った」のではなく「一緒にお金のことを考える仲間になった」。そう思えると、あの経験にも意味があったと感じる。

この経験がFP2級と資産形成につながった

保険営業の経験は、今の資産形成の考え方に直結している。

仕事をしながらFP2級を取った。最初は「お客さんに見せる資格」くらいの感覚だった。だが、結婚して、子どもが生まれて、家を買って、家計を回す立場になって、FP2級の知識が実感を伴って役に立つようになった。

友達に保険を売って学んだ「お金に働いてもらう感覚」は、今のNISA運用にもつながっている。あの経験がなければ、40代でNISAを始めることもなかったかもしれない。

保険営業を考えている人へ

今振り返ると、保険営業の経験は自分の人生の土台になっている。お金の知識、人との向き合い方、断られても立ち上がるメンタル。すべてがその後のアフィリエイト、転職、そして今の55歳独立の計画につながっている。

友達を失った代償は大きい。でも、あの経験がなければ今の自分はいない。

もしこれから保険営業を始めようとしている人がいたら、伝えたいことがある。

友達に声をかけることを避けては通れない。でも、自分が心から良いと思える商品を、自信を持って提案してほしい。「売る」のではなく「届ける」という感覚で。その商品が本当に相手のためになるかを考え抜いてから声をかけてほしい。そして、断られたら深追いしない。それだけで、友情を守りながら営業を続けることができる。

そして何より、保険を売る前に自分自身がその商品に入ってほしい。自分が良いと思っていない商品を友達に勧めるのは、それこそ友情の裏切りだ。

それでも離れる人はいる。それは仕方ない。でも、残ってくれた人との関係は、営業を超えた本物の関係になる。

友達が減ったことは悔いが残る。でも、あの経験があるから今の自分がいる。

保険営業で学んだことは「商品を売る」ことではなかった。「相手の人生に踏み込む覚悟があるか」ということだった。お金の話は人生の話だ。家族構成、収入、将来の夢、不安。それを聞かせてもらうには、信頼がいる。信頼を得るには、自分も正直であることが必要だった。

今、このブログで自分の経験を正直に書いているのは、あの頃の営業スタイルと同じかもしれない。自分の人生を開示して、読者の人生に少しでも貢献する。形は変わったが、やっていることの本質は変わっていない。あの頃の経験が、今の自分の発信スタイルを作っている。友達を失った痛みも、友達の資産を増やせた喜びも、すべてが今につながっている。

保険を売っていた頃、「中立な立場で相談できる人間の価値」を実感することは難しかった。売る側にいると、どうしても自社商品のフィルターがかかる。でも今は、自分が見直す立場になってわかる。特定の会社に属さない独立系のFPなら、商品ありきではなく、その人の状況に合った提案ができる。友人への保険営業で傷ついた経験があるからこそ、そういう相談の仕方の方が誠実だと、今は思っている。

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この記事は保険営業時代の個人的な経験に基づく記録です。

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